精神の声 / アレクサンドル・ソクーロフ



怒濤の6時間、網膜に定着したまま消えない兵士たちの表情。
そして今もきこえるよ、スピリチュアル・ヴォイセズ…。


ふつうならば戦場ドキュメントには明らかに不純物としか思われないような優美な音楽やSEは、
ドキュメンタリーは畢竟フィクションでしかあり得ないという宿命を自明のものとするかのよう。
兵士たちは、まるで劇映画のように計算し尽くされたフレームで切り取られてく。
なぜ彼らはカメラという異物をまるで見えないかのように意識していないのか。
それがすごく不思議だったけど、よく考えたら戦闘状態で映されてる自分を意識してる余裕なんてない。
それが戦場ですよね。その領域を侵すまいとする監督の、兵士への並々ならぬ敬意の賜物でもあろうけど。

最終話で、今まで隠蔽されてたソクーロフと兵士たちとの会話や友好っぷりが仄かに明かされて、
この映画の虚構性、エゴイスティックなストイシズムみたいなのが浮かび上がってくる気がした。
『太陽』が極限までリアリスティックで、この作品は極限まで虚構だという逆転現象が起こってる
気がして、なんとも不思議で興味深い、いろんな意味で稀有な作品だと思います。


http://movie.goo.ne.jp/movies/PMVWKPD29932/index.html