ぐるりのこと。/ 橋口亮輔



学生みたいに立ち食い蕎麦をすするふたり。
夫婦を描いて夫婦然としていないし、うつを描いて鬱々としていない。
そこがいいなと思った。


いっぱい笑わせ、泣かせる映画。
薄っぺらなそれでも、単に繊細なそれでもなく
山田洋次に"こんな作品橋口君にしか創れない"と言わしめた)橋口節。
毒もいっぱいなのだ。


夫カナオはふたりの初生児が夭折したとき悲しいとも辛いとも言わない。
ただ残念だったと言う。親父が首吊ったときも泣かなかったしと言い、
そういうの苦手なんやと言う。


「頭で考え過ぎなんだよ」「みんなに好かれなくたっていいじゃない」
翔子に対するその言葉はカナオじゃなく、
リリーさんに諭されているようでちょっと癪だったけど
翔子とカナオ。そのどちらにもひどく共感。


カナオの職が法廷画家という設定も面白かった。
殺害女児を「食べた」と証言する狂気の犯人でさえ、
この映画はまるで彼ら画家連中のように淡々と描き出す。
その水平線のような視線がいいなと思った。


Akeboshiのうた*1もマッチしているし、
うたい文句の「何十年先も心に残る名作」これ本当です。


http://www.gururinokoto.jp/