フィツカラルド / ヴェルナー・ヘルツォーク 監督
びしょびしょになった男女が、舟を降りるや否や、オペラハウスへ向かい、
小粋な黒人のガードマンに訴えて会場にもぐりこむのである。
エンリコ・カルーソーの公演に。
彼の言によれば、3日かけて、カヌーでこぎ着けたという。
冒頭から、いきなりキンスキーの怪演。
ここのシーンだけでも湯だってしまいそうなくらいの熱っぽさ。
「俺は、山を動かす」
あばら屋で、インディオの孤児?たちと暮らすフィツカラルドには
ふしぎと傲慢さが無い。
アマゾン奥地の首狩族は、彼を宇宙船に乗った白い神だと思い込む。
320tの蒸気船に山越えをさせるシーンは、
ピラミッド建設を人力で再現したしまったかのような狂気の記録。
「イキトスにオペラを持ってくる」という夢にとり憑かれたフィッツに
惚れ込み、資金を提供するモリー(クラウディア・カルディナーレ)。
この人が気品あふれるものだから、大富豪の未亡人?かと誤解していたが
娼館のマダムなんですね。
フィッツを鼻で笑って侮蔑する成金どもの金が
じつは彼に流れているというのも、いい。