愛おしき隣人 / ロイ・アンダーソン
ミシェル・ゴンドリーとカウリスマキが共作したかのような映画。度肝ぬかれました。
アンダーソン氏、65歳ということが信じがたい。
出てくる男といえば、押し並べて髪のうすい男ばかりで混乱した。
しかし、そんなことは無問題ということに途中で気づく。
みんな、同じだからである。皆、子供じみた大人ばかり。
夫に「クソばばあ」と罵られたショックで授業放棄する女性教師。
男に「消えて」を連発し、「でも帰るかも」を繰り返す中年女性。
この映画が切りとる、白粉をぬった人たちの日常は数知れないが、
彼らはとにかくよく泣く。
その泣き方はただただ素直で、人生が楽しすぎて泣くのだとさえ思えてくる。
すばらしい構図のなかに、間抜けな人間。幾度も爆笑してしまった。
彼らが喜怒哀楽するとき、その姿を常に見ず知らずの第三者が眺めているという
ふしぎな法則が、この映画にはある。
「みんな知らない人たちなのに親切だったわ。素晴しかった」
ニッケと結婚する少女を祝福するのも、大勢の他人。
他者が見当たらないときはどうするか。彼らはレンズの向こうに観客がいることを
知っていて、当たり前のように独白をはじめるのである。
それらの視線が常々交差していて、まなざしの温かさにいちいちほっこりとなりました。