ル・アーヴルの靴みがき / アキ・カウリスマキ 監督
殺風景な部屋に、かすかな灯りと、一輪の花を添えるような映画。
これがカウリスマキの神髄と思っていたが
今度の新作は、一輪どころじゃあない。
(大団円では、サクラが花開くというあまりに映画的なシーンまで用意されているのだ!)
いつも無表情なカティ・オウティネンまで、朗らかで
むしろ暗さが足らない、と思うほどだ。
病に倒れた妻と、毎朝彼女を見舞う夫。
「私がいないと、また無駄遣いして…」
「特売だったのさ」
照れを隠しながら、両手に携えた花を病室に飾る夫。
老夫婦の、かわいいこと。
パン屋にはツケが溜っていて、
向かいの八百屋には、通りかかっただけでシャッターを下ろされる始末。
でも、彼らがマルセルの発揮する男気を認めたとき
この街の資本主義は、ゆるやかに融けてなくなる。
「撃つな!子供だぞ」のモネ警視も、粋!パイナップル!
「まともな職業もあるが、靴みがきと羊飼いこそ人々に近いんだ」