マリア・ブラウンの結婚 / ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー 監督



ようやく観れた。ニュー・ジャーマン・シネマの代表とされる作品。
1943年。タイトルバックの紅い文字、奥で烈しく鳴っている銃声。
そのカオスのなかでふたりは略式の式を挙げ、翌朝、夫は西部戦線へと戻っていく。


とにかく、敗戦でもフェミニズムでもなく、
矜持の問題を取り上げていると思った。そして、それを支えた(自己)愛。


マリアは、ドイツ人女性としての誇りなどというものは、とうに捨てている
(捨てなければならなかった)。
一方、ヘルマンはそれに執着し、保ち続けようとする。


戦地に行ってからヘルマンは時間が止まっており、マリアは逆にどこまでも急進的。
「あなたが私と関係したのではなく、私があなたと関係したのよ。」
ヘルマンにとって、マリアは何光年も先に進んでしまっているのである。


惚れ惚れするほど逞しく、したたかに、自分の道を切り開いていく。
しかし、したたかであればあるほど、彼女の運命は悲哀に満ちていく。


ビジネスで上り詰め、大金を手にし、肉親をも見下すようになる。
高慢ちきになるところなんて、目も当てられない。
そんな中にあっても、さいごまで可憐さと気品をもちあわせている。
この複雑さを体現したハンナ・シグラが、心底素晴らしいと思いました。


列車でからんで来たアメリカ兵をやり込める場面など、名シーン。


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