牡牛座 / アレクサンドル・ソクーロフ



権力者4部作の2作目。
まず、病床のレーニン、苔色なことにおどろく。


絵画のような画面、みている者がそこに潜り込んで行くような感覚、
はるか彼方から仄かに響いてくる音楽。またしても、すべてがソクーロフ的。
まどろんでしまう時でさえ、主人公の朦朧とした意識に同化しているようだ。


彼がずっと解きあぐねている「17×22」という数式も、とりまく人間の敬意のなさも
なぜか姿形の酷似した妻と妹の存在も・・・それらすべてが不気味で謎めいていながら
ごく当然のごとく棲みついている。
ぶさまに草の上を這うことしかできなくなったレーニン、でもその彼と妻、
いまや醜い二人のピクニックのシーンは格別美しい。


おどろくべきはレーニンが実際に療養した屋敷を使い、
「レンズなしの撮影機」で撮られているということ。
俳優は『モレク神』のヒトラー役と同じだということ。


「人民は飢え苦しんでいるというのに…自分が恥ずかしい」そう嘆き血迷い、
スターリンが置いていった木の杖で食器を割りまくるところから
ラストまでの静かな加速は、監督が「作品は、フィナーレのために創られる」と語る
まさにその大団円。


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